【花見2020】新型コロナヴィルスパニックの中を大岡山から緑が丘そして自由が丘へとセンチメンタルジャーニー花見

2020/03/26 伊達美徳
 
 2020年3月26日の午後、
いかにも春らしい良い天気の中、
毎年春に訪ねる母校キャンパスの花見へ。

2020年3月24日に東京オリパラ2020が延期になったが、とたんに25日から東京都内のコロナ感染者が激増、これって変だよなあ、それまではコロナ君はオリパラ業界に忖度して感染を遠慮してたのかしら、いかにも正体不明のヴィールスらしい仕業、なんてまあ奇妙な現象だことよ。
 あわてた都知事は、こりゃ非常事態だわね都民は外出お控えなすってと談話発表、いやはやコロナコロナでなくては夜も日も明けぬ騒ぎの真っ最中のただいま、花見などしてよいものか。

 あ、もしかして明日からは東京は都市封鎖するかも、そうすりゃ神奈川県境の多摩川に架かる橋の上に関所ができて、女子供高齢者は通関禁止になるかもしれないな。
 これは危ない、悪くするとコロナに罹って今年の母校の花をみないままに死ぬかもしれぬ。外出するなとの見えない身辺圧力をじわじわと感じるも、あれこれご批判はあるでしょうが、こうなりゃ勇気をもって振り切って、やっぱり花見に行かなくちゃ。
花見ごときに覚悟がいるとはねえ。
例年は同期生たちを誘うのに、さすがに気が引けて今回は単独隠密徘徊花見。



 大学のウェブサイトに、今年はコロナで例年の花見のキャンパス公開はしないとあったから、校門を入れてもらえないなら、どこでも勝手知ったる裏口から潜り込もう。
 だが、校門前に行ってみるとけっこう大勢の出入りがある。振袖やマント(ガウンというべきか)姿も見えて、雰囲気からして今日は卒業式、学位記授与式の日らしい。それでは閉じるわけにはいくまいから、正々堂々と入門。
 まずは桜の名所本館前全体を俯瞰すれば、ありゃ、花の咲き具合がまだまだらしい、それに左に見える白い板囲いとその落書きはなんだ、花見の露店でもやってるのか。

 花の下に行く前に、あの塀の中で何やってるのか見てこようと近づく。
 そこは昔々わたしが居たころはテニスコートだった場所、そこに国際交流拠点となる「Hisao & Hiroko Taki Plaza」なる建物の工事現場だった。
 その名称のいわれは、この施設の寄付者が飲食店ネット情報業「ぐるなび」社長の滝氏によるもので、2020年10月のオープンだそうだ。

 そのデザインはなんとあのヘタクソ建築家の隈研吾、こここにも簀の子板だらけ、材木屋の倉庫が出現するのだろうか。板囲いに下記のような絵が張り付けてあった。
 ここらあたりは本館・70年講堂・本部・百年館・図書館・東工大蔵前会館など、谷口吉郎門下につらなる名建築家たちの作品が立ち並ぶのだが、ついに異種が入ってきた。
 それはそれで偏屈な純血主義よりも良いにしても、寄付者の意向だろうがよりによってあのヘタクマさんとはなあ。



 さて本館前の花の下に行こう。おお、ここにも今やどこの公園でもおなじみの、コロナ宴会禁止のお触れが立っている。
 花は7~8割がたの咲き具合か、ちょっと物足らない。そればかりか、見回せば桜の枝があちこちかなり伐られているから、去年よりも花の量が少ないのはそのせいも大きい。
 昔々、この木の下で山岳部のトレーニングやってた頃は、細くて背丈よりちょっと高いくらいだったのになあ、この身をよじらせてごつごつした姿は、わが身そのもの。




 今日は卒業式だから、花の下には男はどいつもこいつもダークスーツ、そして数は少ないが角帽にガウンの装いの奴もいる。女は振袖や袴姿も結構いうる。
 いい加減だったわたしのころに比べると、みんなフォーマルコスプレを好むらしい。そのくせ男に紋付き袴はひとりも見かけなかった。
 例年なら子連れ女性たちの花見客でにぎわうのだが、さすがにそれはいない。でも近頃は卒業式に親がやってくるらしいのに、今日はそれも見えない。あとで大学サイトを見たら、全体の式はやらない、各コースでやる、親たちの出席不可とのことで、コロナとはいえ淋しいことである。


 本館前から線路を越して坂を下り、ひょうたん池の上にある林の中のワグネル先生記念碑にたどり着く。
 この辺りは大学キャンパスでありながら緑豊かな自然公園の感じ、実はそれもそのはず、このあたりは都市計画公園指定地区だから土地利用制限が厳しいのだ。そのうちに一般公開する公園になるのだろう。


 去年の花見は同期仲間たちとここで花見宴会をやった。酒飲み話に、来年は桜の苗木を持ってきて、このあたりに傘寿記念植樹しよう、コッソリやるしかないが面白そうだ、なんて気炎を上げたのだが、忘れてきてしまった。
 東急ストアで買ってきた寿司と、うちから持参の消毒飲料で独り宴会だが、やっぱり独りじゃつまらん、消毒不十分になるな。わたしの本日のいでたちは白覆面、こうでもしないと、電車の中で非国民・反社会人物と糾弾されるかもとビビっているのだ。なんだか怖い世の中になってきた。コロナと言えば何でもできそうだなあ。

 呑川の桜は今年も美しく咲いている。今は川の上に蓋がされてしまっているが、昔々はどぶ川だったので蓋したのだろう。でも今は水質が良くなっているはずだから、蓋を取っ払ってもよさそうに思うのだが、どうなんだろうか。

 緑が丘に登る坂道も花で美しいし、今日の新卒業生たちが学位記を手にしながら下ってくる風景は、なんともキャンパスらしい季節感にあふれる。

 この坂を上った緑が丘の上は、昔々は向岳寮があるだけだった。いまは新旧の建物が立ち並び、建築、土木、都市計画など環境系コースの学びの場になっているらしい。さすがに建築系のエリアらしく、それなりのデザインの建築もある。


 この緑が丘の西斜面の下の道路際に、新しい大学寮が建っている。緑が丘ハウスなる名称で、これまた建築っぽい姿である。
 昔々の向岳寮は木造平屋で、丘の上にべた~と建っていた。戦後にどこかから移築してきたそうだから、わたしが居た頃には既に古建築の風貌だった。しかし思えば、この丘の上を寮生だけで独占していたのだから贅沢な環境だった(→その画像)。


 キャンパスを出て緑が丘駅への道に、緑が丘百貨店がある。記憶が薄れているが、これって昔々もあったような気がする。狭い通路の市場型で、近隣型商店がいくつも並ぶ懐かしい昭和の風景である。センチメンタルジャーニーそのものである。そういえば近くに風呂屋もあったなあ、さすがにそれはもうないだろう。


 緑が丘から自由が丘まで、九品仏川緑道の桜を愛でながら歩くことにする。昔どぶ川で、川縁の諸所に桜が咲いていたものだ。わたしは自由が丘に家庭教師のアルバイト先があったから、よくここを行き来したものだ。
 この川には蓋をしたのではなく、埋めてしまったらしい。


 自由が丘駅まで久しぶりに歩いた。この街はわたしの昔々の記憶とは、駅前あたりの雰囲気はあまり変わっていないが、おおきく変わったのはその奥の住宅街まで商業化が進んだことである。
 いつもにぎわうこの街の駅前広場も、どうやら人出は少ないのはコロナだからだろうか。ケーキ屋モンブランもあるし、自由が丘デパートは健在だし、飲み屋街のよく行った(もちろん学生時代じゃなくて)金田もあった。




 こうしてコロナ焼夷弾の降る中を東京花見徘徊を終えたのだ。コロナ騒ぎの東京は、どんな戒厳令下の風景にあるのかビクビクしていったのだが、横浜と特に変わったところはなかった。電車は適度の乗客数であり、街中も適度の人出で、これってけっこう快適だよなあ。実はこれが普通の風景で、いつもが混みすぎてるんだよ。

 この間、コロナ騒ぎに直接面したのは、後から考えてみると、大岡山駅前の東急ストアの中だけだった。
 午後1時ころなのにずいぶん混んでいて、支払いの行列が長い。寿司弁当一つだけのわたしはずいぶん待った。そのときは食品量販店はこういうものかと思ったのだが、今思えばあれはコロナパニック買い出し行列だったのだ。へえ、そうなのかあ。

 街でも電車でも白覆面、黒覆面が行き交うのはなんとも不気味だが、そのうちになれるだろうか。昔々70年代の公害全盛時代日本のこと、東京の町は自動車排気ガスのスモッグに覆われて、道路上空に雲ができるほどで、だれもかれも白マスクをしていたものだった。
 この覆面のデザインは何とかならないものかしら、黒覆面は烏の嘴デザインはいかが、白いままじゃ淋しいから自分の鼻や唇を描けばよかろう、あ、透明な覆面(これって矛盾語か)はないのかしら。

 47都道府県対抗ジャパンデミックコロナ回避チャンピオンシップレースは、次々と脱落していって、3月26日現在で残るは山形、岩手、富山、鳥取、島根の5県のみになった。最後になる県には、流行遅れポツンと一県賞を、いや、防疫体制最先進県賞を差し上げてくださいな。
 わたしの予想としては、チャンピオンは新幹線のない鳥取と島根のどちらかになりそうな。
 
 なお、これまでの花見の記録、キャンパスの名建築については下記を参照されたい。
大岡山花見2019 ・大岡山花見2018 ・大岡山花見2016 ・大岡山花見2015 
東京工大プロフェッサーアーキテクトたちの競作となった名建築群

(2020年3月27日記 伊達美徳)


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